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night cruising〈0 Japan Tour 2015〉小津安二郎『生れてはみたけれど』に肉付けされる室内楽

      2016/02/12

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night cruising〈0 Japan Tour 2015〉

night cruising〈0 Japan Tour 2015〉

この日(2015年10月24日)は京都の風物詩〈ボロフェスタ〉初日で、どちらに行くか大変迷いましたが、古都エレクトロニカシーンの一番手であるnight cruisingの9周年企画だったこと、そして小津安二郎のサイレント映画『生れてはみたけれど』とフランス出身で現在はドイツ在住のミュージシャンSylvain Chauveau率いる室内楽アンサンブル「0(ゼロ)」の音楽がどのようなケミカルを起こすのかということに興味を奪われ、〈0 Japan Tour 2015〉に参加しました。

ドイツの芸術家をサポートする京都の施設「ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川」

もう一つの理由としては、会場のゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川が挙げられます。ライブハウスのMETRO近くにあるこの建物は、ドイツの芸術家を3ヶ月間招聘し、創作活動を行う場所で、多文化交流の場所でもあります。こうした施設で音楽ができるというのは、とても貴重で、当日は多くの外国人も来場していました。フランスはパリでテロがあったばかり。今、大変苦難の時期です。だからこそ異文化間の交流に意味があると思うのです。少しでも早く穏やかな日々がフランスをはじめ、世界に訪れることを祈って、このレポートを書き上げました。

Polar Mの美しいサウンドスケープ

オープニングはnight cruisingと縁の深いmuranaka masumiのソロユニットPolar M。MV「Darkblue Sky」をスクリーンに投影し音を重ねてゆく手法です。夕暮れ時の海、ゆらめく高積雲と高速道路、穏やかな鴨川沿い……。宮永亮さんの映像は、透明感のある電子音と爪弾かれるようなギターサウンドを引き立て、美しいサウンドスケープを作り出していきます。この日は奈良sonihouseのオリジナル12面体スピーカー「scenery」を会場に6台設置。Polar Mの織り成す音楽が360度に広がっていく様は、圧巻としか言いようがありません。

muranaka masumiのソロユニットPolar Mのステージ

muranaka masumiのソロユニットPolar Mのステージ

名古屋発、新進気鋭の女性エレクトロニカミュージシャンNoah

続いて名古屋のNoahによるパフォーマンス。Flauから『Sivutie』をリリースした新鋭女性アーティストで、北欧エレクトロニカを音楽性が魅力的です。今回初めて見ましたが、遠くで鳴っているような音作りと空気のように吐き出される歌が印象に強く残りました。ドローンやノイズなども至る所に散りばめられていましたが、それらも感情のひとつとして表現されているような、繊細かつ力強い曲たちに、会場全体が飲み込まれていったように思います。

奈良sonihouseのオリジナル12面体スピーカー「scenery」

奈良sonihouseのオリジナル12面体スピーカー「scenery」

『生れてはみたけれど』とSylvain Chauveau率いる室内楽アンサンブル「0(ゼロ)」

メインアクトの0はギター、ギター、フルート、そしてラップトップやピアノなども弾くパーカッションの4人編成。着席しながら楽器を抱えて演奏する姿はまさにカルテット。ライヴというより、コンサートを見ているような気分にさせられました。サイレントムービーの名作『生れてはみたけれど』に肉付けされていく音楽は、とても柔らかくて穏やかなもの。小津安二郎の映像にクラシックや現代音楽、エレクトロニカなどの影響を感じさせる曲たちがサウンドトラックとして一体化していく時間はあっという間に過ぎていきます。無音映画も音楽と合わさることで印象が変化していくのは非常に興味深かったです。

Tatsuyaさんのnight cruisingは一度行くべきイベント

night cruisingを主宰するTatsuyaさんはDJ、音響、オーガナイザー、レーベルのオーナーという多彩な顔を持っています。氏をなくして、今の京都エレクトロニカシーンは無いと言っても過言ではありません。多くの人たちが知っているわけではないけれども、大きな影響を及ぼしたり、核となるアーティストは多く存在します。そんな彼・彼女らの音楽を京都に紹介してきているTatsuyaさんのイベントは、音作り・会場選びが特にしっかりしている印象があります。だからこそ、アーティストは持ち味を最大限に発揮できるし、見ている私たちも、その渦に飲み込まれていくのだと思います。特にテクノや電子音響系の音楽が好きな人たちには、night cruisingの企画に一度足を運んでほしいと切に思います。

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